管理人のブラジル回想記

No11

 

屈辱の紅白戦後、初めてのオフ。

ホテル・アベニーダ・パラセという、サントスの海岸沿いのホテルに宿泊していた僕。

ホテルの入り口のベンチで、辞書を片手に、砂浜と曇り空を見上げていた。

 

一台のタクシーが止まる。

降りてきたのは日本人?いや、日系人。

サントスFCのバックを持っている。

あ!日本で世話になったブラジル人、セイジのお父さんがサントスFCにカラオケ友達がいるって言ってたっけ!

確か…タイラさんとかって言ってたな…。

 

ポルトガル語が到着後10日程度の僕にわかるはずがない。

しかし、辞書を片手に勇気を出して話しかけた。

『セニョール・タイラ?』

反応が良い。そうみたいだ。

しかし、彼も日系3世か4世。日本語は全くダメだった。

 

『カラオケ…エイ(セイジのお父さんはエイ・ヨシオという)…ジャポン…』

今になってみると、ひどい単語を並べたもんだ。

タイラさんは、『オオ、アミーゴ!』と微笑んだ。

しかし、それまでだった。

 

数分後、サントスFCのバスが到着した。

野次馬達が数名集まる。

なんと、サントスFCはこのホテルで食事をするらしい。

ペレの息子、エジーニョが僕の隣に座る。

とっさに握手してもらった。

さすがに手が大きかった…。

 

ホテルの荷物係が、僕の辞書開き、僕に説明してくれた。

早速サインをもらうためにシャツとマジックを取ってきた。

カメラを置き忘れたが、サインをもらうことに成功!

この時初めて、現在FC東京でプレーするジェアンと会話をした。

『オマエ、ジャバクアラニイルニホンジンダヨナ…』

彼は気さくに話しかけてくれた。

 

テレビカメラがやってきた。

バスに向かって、『ボアソルチ・サントス!』と言ってくれと頼まれた。

ああ、構いませんよ、それくらい…。

※次の日、ジャバクアラの選手達は、僕がテレビに映っていたことを教えてくれた。ブラジルでテレビデビュー…。

 

サントスFCのバスの出発を見送った後、女性が寄ってきた。

このホテルに宿泊しているというシルビアさん。

『私の家族と食事でもどう?』

今になってみると、とんでもないことなのだけれど、初対面の人に、図々しくも食事を奢ってもらう。

初めて食べるフェイジョアーダだった。

※余談だが、今でも僕はフェイジョアーダを食べることがある。何気に好物になった。

 

ポルトガル語を話せない僕。

そんな日本人に対して、決して安くはない食事をごちそうしてくれた…。

ブラジル人の粋な計らいは未だに忘れられない。

日本人は、日本語の話せない外国人に、初対面で食事をごちそうできないでしょ?

このシルビアさんはたぶん金持ちだったんだろうけどさ、こういった粋なところを僕も持ちたいと思ったよね。

 

続く