管理人のブラジル回想記

No15

 

チームの練習試合。

当然というか、僕はベンチにも入れなかった。

僕の他にも数名…え、こいつが?というぐらい上手いやつもベンチから漏れていた。

試合に使わない奴はベンチに入れない、今思えば、レーロ監督の方針なのだろう。

 

試合は2−0でジャバクアラの勝利。

やはり、格が違っていた。

 

本音、悔しい気持ちを抑えられずにロッカー室へ向かう。

役員の人たちは、『何で出ないんだ?』と聞いてくる。

うるせえなあ…。

 

そんな時、マッサージスタが僕を呼び止める。

そして、壁を指さした。

壁にはスパイクを投げつけたような跡が残っていた。

『対戦相手の途中交代した奴がやったんだ。トモも悔しいだろうが、こんなことしたらみっともないぜ…』

妙に納得してしまった。

 

帰りのバスで、試合に出られなかった数名が声をかけてきた。

『今日の夜、草サッカーがあるんだ。レーロにばれたらヤバいけど、トモも一緒に行かないか?』

二つ返事でOKした。

 

ちょっとうっとうしい奴、でも、どこか憎めない奴ペッチーニョがホテル・カラベラスまで迎えに来た。

ファヴェイラと呼ばれるスラム街の近くを通る為、気をつけろという。

バスを降りると、いかにも危なそうなところ(※この近所で、この後、95年のブラジル全国選手権決勝の際、サントスの対戦相手となったボタフォゴのサポーターが銃殺されたらしい…)。

 

バイクの音がして、ペッチーニョは『隠れろ!』と電柱の後ろに腕を引っ張る。

本当のギャングみたいな輩がバイクで通り去る…おいおい、マジかよ…。

そうして、無事にグランドに到着した。

 

試合はアマチュアらしく、僕も得点チャンスに絡んだり、まあまあだった。

芝のグランドなのに、みんな裸足。

仕事が終わった後、みんな集まってボールを蹴る。

今の日本のフットサルの感覚なんだろうな。

 

帰りはワーゲンビートルに7人詰め込められ…ホテル・カラベラスに到着した。

車内は当然のように笑いが絶えず、僕もポルトガル語がわからないなりに笑っていた。

 

今ぐらいポルトガル語がわかれば、もっと楽しかっただろうけど。

 

続く