管理人のブラジル回想記

No26

 

ジュベニーウでの練習は、カミニャーダ(長距離走)からスタートした。

絶対1位で帰ってきてやる。

少なくとも、日本人3人で、先頭を走ってやる、そう話してからスタートした。

 

コースがわからないので、とりあえず着いていく。

折り返し地点を過ぎたら…僕たちの独壇場だった。

『てめーらなんかに負けてたまるかよ!』

その気持ちしかなかったから。

 

当たり前のように先頭で帰ってきた。

コーチのカルロスは驚いていた。

選手達も、

『オージャポネーズ、ロウコ…』

日本人気違いという意味だけど、それが心地よかったね。

 

練習終了後、昼食をどこで食べたらいいかわからないし、一度ホテルに帰ることにした。

バスを捕まえようにも…ブラジルのバス路線の多さは世界一。わかるわけがない。

 

僕の決断は…歩いて帰るというものだった…。

 

一緒に来た日本人が『もう小林さん呼ぼうぜ…』と叫んだ。

『そんならお前一人で呼べばいいじゃん!』と僕が応戦する。

もう一人の日本人は、黙って僕についてきた。

 

日本人3人組。

今思うと、無謀な挑戦だった。

1時間ほど歩いて、ホテルに着いた。

 

事情をホテルで話す。

『バスの路線を教えてあげるわよ…』チアは笑っていた。

 

午後の練習にはバスで向かうことになった。

 

ジャバクアラに着くと、コーチのカルロスが驚いていた。

『食堂に連れて行こうとしたら、お前らが消えていた…』

今思えば、僕はこのカルロスというコーチを信用していなかった。

タバコを吸っている姿が、どうしてもサッカーの指導力のある人に見えなかったから。

 

近くのグランドへ歩いて向かう。

今でも忘れない。ジュニオールの選手、ニエウと会った。

彼はジュニオールの練習へ向かう途中だった。

『お前らどこに行くんだ?』

『ジュベニウの練習に出ろって言われたから…』

『え?俺たちと練習するんじゃないのか?』

はあ…虚しさが倍増だよ。

 

とんでもなくひどいグランドには耐えられるけど、ブラジルでサッカーをすることが、こんなに辛いとは…

プライドも傷ついたし、途方に暮れるしかなかった。

そんな時、ジョルジ・ルイスという子が声をかけてきた。

『君たちは今どこに住んでいるんだい?』

どうやら同じ方向に住んでいたらしい。

まあ、せっかくだし、同じバスで帰ることにするか…。

 

続く