管理人のブラジル回想記

 

No28

 

今更なんだよ。

ジャバクアラの役員は、明日話がしたいから、迎えに来ると電話でチウに告げたという。

ジュベニーウで練習するなら意味がないじゃん。

日本人は確かにサッカー下手だけど、プライドを捨ててまで、僕はジュベニーウでは練習できないよ。

 

そして、この後大変お世話になる、玉木さんから電話が入った。

『近いうちに、サントスを出よう。サンジョゼと話はつけた。』

従うしかなかった。

 

次の日、ジャバクアラの役員が迎えに来た。

『来週からジュニオールで練習してくれ。ホテルも出て、住むのはジュニオールの選手寮だ』

もう信じられない。

 

そして、皮肉にもジュニオールの公式戦が行われていた。

対戦相手はサンベルナルド。

勝てばジャバクアラの決勝リーグ進出が決まるという。

 

先制したのはジャバクアラ。

ピッチは最悪の状態だったが、ホームの利を活かしていた。

このまま終わるかと思われた残り3分…悪夢の同点ゴール…。

 

その直後、ヴォランチのシジーニョが、キレてしまい、ファウルを犯す。

そのときに、普段は温厚なはずの、あのアレイがキレた。

『カーマ!シジーニョ、カーマ!』落ち着けという意味のカーマ!を連発した。

 

そして…そのアレイの気迫が乗り移ったのか…。

残り1分、もしかしたらロスタイムか?駄目押しゴールが生まれた!

勝ったのはジャバクアラ…。

良かったな…。

 

試合後のアレイを捕まえて、僕はサンジョゼに行くことを告げた。

『しょうがないね…』アレイは言っていたけれど、君の親切は忘れない。

今でも君のくれたサンパウロFCのジャージと、ユニフォームは大事にしている。

 

ホテル・カラベラスを出る日…またチアはいなかった。

お手伝いの女の子が、僕に声をかけてきた。

『また戻ってくるよね?』

『もちろん戻ってくるよ…』

そう答えるしかなかった。

できるなら、ここにずーっといたかった。

今でも僕はサントスの街を思い出す。

この3週間ほどの滞在で、何度かサントスFCにも行った

ジャバクアラのジュニオールの選手の大半と、ジャーンはサントスのジュベニーウで一緒だった。

ジャバクアラのジュニオールの寮に、ジャーンはよく遊びに来ていた。

僕が遊びに行ったときも、ジャーンが来ていたことがあった。

ジャーンとはそうして仲良くなった。

今、彼が日本でプレーしているのも複雑な気分だ。

いつかFC東京の練習に行こうと思っているのだが、まだ実現に至っていない。

 

本当に、今でもサントスには色々な思いがある。

僕はサンチスタだし。

 

小林さんに挨拶をして、サンジョゼに向かった。

玉木さんの車が、ホテル・カラベラスを後にした。

 

今でもあのホテルは、笑いに満ちているのだろうか…?

 

続く