管理人のブラジル回想記

※実話を過去の日記に基づいて回想しております。

 

No82

 

7/28、アレイアスという街での試合。

相手はアレイアス選抜。観客も入っているし、いつものように花火も上がる。

アウェーゲームなのだけれど、ちょっとほのぼのした感じで試合前のアップも心地よかった覚えがある。

独特の赤い土の山が見える。

試合は終始僕らUCEのペースで進む。

前半特に、僕は効果的なスルーパスを通せたことが嬉しかった。

後半はトラップミスが目立ったと当時の日記に書いてあるが…。

 

2−1でリードのまま、試合も終了するか…というロスタイム。

まさかの失点…

ゴールに落ちたボールを拾いにいったのは僕だった。

勝ちたかったから…

 

その瞬間ハットが言った。

『引き分けでいい、慌てるな!』

つい、日本語で『バカ!てめぇ勝ちたくねぇのかよ!』

散々日頃から日本語を教えていたので、ハットは『バカ』というフレーズに反応した。

『俺はバカじゃない』と。

 

結局試合は2−2で終了した。

 

試合後のシャワー室でハットは落ち着いた表情で僕に話しかけてきた。

『親善試合なんだから、引き分けでいいじゃないか…』

この言葉には今でも納得がいっていない。

 

つい、他の日本人選手達にも聞いてしまった。

『俺、勝ちたいと思ったんだけど、だめかなあ?』

『齊藤さんの考えは当たり前だと思うけどな…』

うーん、未だにハットの言葉は謎のままだ。

 

アウェーの親善試合の場合は軽食が用意される。

パンとソーセージ、コーラ。ささやかだったけど、試合後に食べる物は何でも美味い。

 

翌日、母親から手紙が届いた。

内容の中に悲しい事件が…

祖母の家の猫が亡くなったという知らせ。10年以上生きた猫だったから、正直寂しかった。