管理人のブラジル回想記

※実話を過去の日記に基づいて回想しております。

 

No83

 

母親からの手紙が届いた日の昼下がり、その日の練習はオフだったので、トレーニングジムに行く途中にスポーツ店に寄った。

 

月に一回支給される小遣いも結構貯まったので、何か買おうと思っていた。

ゲームシャツを見る。

ちょっと古い型のサントスのユニフォームがたくさんあった。

 

『ねえ、おじさん、安くしてよ…』

そんな風に話をしていた。

『1枚20ヘアイスでどうだ?』

確かに安い。でもそれじゃ面白くない。

『5枚買うからさぁ、1枚10ヘアイスにしてよ…』

強引な値切り。

『ちょっとそれは…』困った顔の店のおじさん。

『あ、そう、じゃあまた来るよ…』一緒に来た日本人と店を出ようとする。

おじさんはもの凄い勢いで…

『わかった!今日は月曜から特売の日だ!5枚買ってくれるなら1枚10ヘアイスでいいよ…』

 

今思えばひどい値切り方だ(笑)

50ヘアイス払って5枚買ったサントスのユニフォームは、後に日本のみんなへのお土産となった。

 

そして翌日、一本の電話が入る。

最後の1ヶ月、僕は他のクラブで挑戦しようと思っていた。

本当は3ヶ月、そこそこ有名なクラブで練習できることになっていた。

実際にそういう約束でブラジルに行ったから。

 

電話の内容は、『…その話、ダメになった』というものだった。

ショックで翌日の練習は、抜け殻になっていた。

そのいきさつを知るみんなは、何も話しかけてこなかった。